猪口です。
時勢もございまして、仮想通貨・ビットコイン関連のご相談が弊事務所にも少しですがございます。
また、顧問先の経営者・従業員等で所有されている方もちらほら。
先日、平成30年1月26日、仮想通貨取引所のコインチェック社から約460億円相当の仮想通貨(NEM)不正送金により流失した事件が話題になっております。
仮にこのまま回収できず所有者が不利益を被った場合の税務処理を考えてみました。
※あくまで現時点での私見であり、税務的な処理の正確性については未検証ですのでご留意ください。
流出したNEMが回収されない場合ですが、倒産という結末も十分に想定されると考えますので、その前提です。
・仮想通貨は利益確定時に雑所得として処理されるのが原則的な整理です。
以下の記事が非常によく整理されております。
https://btcnews.jp/3b2pzy9m12639/
・本件の場合、仮想通貨に含み益がある場合にはその含み益が強制的に実現され、同時に貸倒損失で相殺させる処理のイメージになるようにも思いますが、ちょっと微妙な論点です。ただ、実際に損しているのが明らかであれば雑所得の税務実務としては何もしなくてよいと思います。
・また、所得税の所得控除の中には雑損控除という規定があります。災害や盗難などで資産に損害を受けたとき、総所得金額の10%を超える部分について所得控除できるというものです。これが本件のような場合に適用できるのかは、論点になると思われます。
・なお、日本振興銀行のペイオフ発動時の預金者の損失は雑損控除と認められておりません。この考え方から類推すると、本件も雑損控除と認められない可能性があります(所有者は損失に対して税務上の救済措置はない)。
・他方、仮に雑損控除が認められる場合には、当然給与所得等からも控除が可能となりますので、確定申告することで損失の一部を実質的に取り返すことが可能になるかもしれません。
・この議論は 1.仮想通貨が雑損控除の対象となる「資産」に該当するのか、2.本件のケースが「災害や盗難等」に該当するのか、の二つの論点があるように思います。
1については、所得税基本通達72条1−1の「不動産所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務(事業を除く。)の用に供され又はこれらの所得の基因となる資産」に該当し、雑損控除の対象となることが原則として認められると考えます。
他方、日本振興銀行の事例では2の「災害や盗難等」に該当しないので雑損控除の適用外という整理になってます。本件経緯については盗難として整理する考え方もありうるように思いますので、場合によってはこの辺が熱いトピックになる可能性があると思います。
・とはいえ結論としては、利用者に厳しい結果になる公算の方が高いのではないかと考えます。
【1/28追記】
コインチェック社より、当該被害にあった利用者に対して日本円JPYにて返金する保障方針が示されました。
仮に、JPYによる返金が実行された場合(正確には、仮想通貨NEM以外の何かに変換された場合)、含み損益が実現することになり課税対象のイベントとして認識されると思われますので注意が必要ですね。
具体的な時期や方法が未定ですので、動向を見守るしかありませんね。
【1/28追記】